脚本家・エッセイスト・小説家など多彩な顔を持つ向田邦子は、少女期を過ごした鹿児島をどの土地よりも印象が強い「故郷もどき」と呼び、「自分の気持ちにしめくくりをつける意味からも“故郷もどき”の鹿児島へ二泊三日の旅をすることにした」とエッセイ「鹿児島感傷旅行」に綴っています。
向田邦子が「故郷もどき」鹿児島を旅したのは、亡くなる2年前のことでした。
鹿児島は祖父の故郷で、喫茶店の旅の原点
私にとっては、母方の祖父の故郷である鹿児島。
幼少の頃から幾度となく遊びに行った私の「故郷もどき」青森と違い、生まれてはじめて鹿児島を訪れたのは2014年3月のこと。
私が「喫茶店の旅」をするきっかけになった「47都道府県の純喫茶」を知ったのは、このとき。
2012年頃から数年間、鬱状態で文章を読むことが出来なくなり本屋に足を運ぶこともなかったので、本の存在自体を知らなかったのです。
GoToトラベルキャンペーン一時停止で北海道旅行は無期限の延期になってしまったけど、「喫茶店の旅」の故郷(原点)、鹿児島に帰ってくることができて良かった。
鹿児島弁と津軽弁が似ていると気づいたのも、今回の旅の成果でした。
向田邦子ゆかりの喫茶店メルヘンへ
鹿児島旅行2日目に、向田邦子が通った山下小学校の向かいにある喫茶メルヘンを訪問。
向田邦子のゆかりの場所ですが、あまり知られていません。
岡本仁さんの「ぼくの鹿児案内。」でメルヘンの存在を知り、かごしま近代文学館企画展示「向田邦子の父と母」を見に行く前に寄りました。
店主の吉富さん(ママ)に向田邦子のことを聞くと、待ってましたとばかりに新聞記事をまとめたファイルを出して思い出話を聞かせてくださいました。
吉富さんの継母が向田邦子の同級生で親友というご縁があり、昭和54年、二泊三日の鹿児島旅行の際に、同級生たちがメルヘンに集まって向田邦子を囲んだそう。
メルヘンは昭和48年創業。
もともとは山小屋風の喫茶店でしたが、シロアリの被害を受け数年でリニューアル。
向田邦子がメルヘンを訪れたのは、おそらくリニューアル前でしょう。
メルヘンはあと数年で締める予定だと仰っていました。
三度目の鹿児島訪問はいつになるかわかりませんが、次来たときにメルヘンの明かりが灯っていたらいいなと思います。
あれも無くなっている、これも無かった。無いものねだりのわが鹿児島感傷旅行の中で、結局変わらないものは、人。そして生きて火を吐く桜島であった。
向田邦子「鹿児島感傷旅行」より
喫茶メルヘン・店舗情報
【最寄駅】鹿児島市電高見馬場駅より徒歩5分
【住所】鹿児島市東千石町3-3
【営業時間】10時〜18時
【定休日】土日祝
▲向田邦子ベスト・エッセイに「鹿児島感傷旅行」が収められています▲
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