また一軒の喫茶店が閉店したので記録します。
東住吉で喫茶探訪をしたあとはあべのハルカスのお膝元、再開発事業が失敗に終わった阿倍野から徒歩で行ける西成区にやってきました。
西成は喫茶店好きの聖地と呼びたくなるほど喫茶店の数が多いので定期的に散策しています。
他府県の方には近寄りがたいイメージがあると思いますが、大阪府民の私からしても少し緊張する場所。
西成といっても広いので、ナーバスになるのは飛田新地周辺だけですが……。
山王市場通り商店街そばの喫茶店、Qピット
薄暗いアーケードのある山王市場通り商店街そばに店を構える「Qピット」。
佇まいがいいし、「Qピット」という店名も素敵だなぁ。
「5月末で閉店するという話を聞きました」と斎藤洋介似のマスターに伝えると、
「閉店したら捨てるだけだから」と超絶にキュートなマッチを数個ジップロックに入れて手渡してくれ、申し訳ない気持ちと嬉しい気持ちが合わさった複雑な感情が胸をよぎりました。
創業から半世紀。
マスターが20歳のときに創業して、あっという間に70歳。
常連さんは次々と死んでいくし、再開発で長年住んでいた人がいなくなるし……ということをユーモアたっぷりにお話してくださいました。
常連さんが来店しマスターに労いの言葉をかけるという一幕を見て、さらにしんみり。
チェーン店ではない個人経営の喫茶店の数は1981年をピークに減少の一途を辿り、現在は最盛期の半分以下に。
大阪で71年続いたMJB珈琲店も閉店しました。MJB珈琲店はずっと続くだろうと思っていたのに……。
私の耳に届かない場所で、多くの喫茶店がひっそりと姿を消していることでしょう。
喫茶店の文化史を書いた「喫茶店の時代」、「琥珀色の記憶 時代を彩った喫茶店」や古い情報誌を読みながら、昔あった喫茶店について思いを巡らすのが好きです。
夢中でいろんな場所に行ったことを後年に懐かしむため。
こんな店があったんだよと遺すため。
私は私のやり方で喫茶店のことを伝えていけたらと思っています。
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